学力テスト改竄の背後にあるもの
学力テスト改竄の背後にあるもの

◇学力テストの改竄の発覚
  2005年の9月から新聞報道により三次市で行われている、市独自の「学校・学年別の学力テ
ストの平均点の公開」をめぐって、改竄が行われていたことが報じられ、市内は勿論広島県内
の大きな話題となっている。
 最初に報じられたのは中学校の教務主任が答案用紙の改竄したというもの。学力テストの
途中で気分が悪くなったため退席した生徒が、翌日テストを受けていない他の生徒と一緒に受
けた時、その際本人がやっていない部分に既に答えが書き込んであり、「ここまでやっていなて
い」といってやり直すということがあったというもの。2005年の9月の三次市議会において「検査
に改竄があったのではないか」との質問に対して教育長は「改竄の事実はないと確認してい
る」と述べたと新聞報道されていた。
 続いて12月には小学校の校長が答案用紙を改竄していたことが報じられた。「校長は国語と
算数の検査を受けた児童21人のうち11人の答案で間違っていた答えを消して正しい答えに書
き直し、学年ごとの各科目の平均点が2・3点ずつあがっていた。すでに6月の段階で市教委
に匿名の電話があり、校長は改竄を認めてもとにもどさせていた」と新聞で報じている。

◇事前テストの事実
  さらに12月末には、学力テストにおいて、前年度の問題を実際のテストの前にやらせ「模擬試
験」を行っていた事実が報道されている。この新聞報道を聞いて初めて学力テストの内容知っ
た市民がほとんどなのだが、毎年全く同じ問題がテストとして出題されていたというのだ。従っ
て前年の問題をコピーしてとっておいて、事前に模試を行い答え合わせをすれば、本番で一挙
に点数があがるということは素人でもわかる。しかし、それが、子どもの「学力」であるわけはな
いことはいうまでもない。12月の市議会を傍聴にいった私の耳に、「4割の学校が事前模試をし
ているという情報がある」と質問に立った市会議員の言葉が耳に入ってきた。後で関係者に尋
ねてたところ、「広島県県内で行っている小学校5年生と中学校2年生の学力テストの場合は6
割が模擬テストをして臨んでいる、前年広島県で最下位だった学校は20回事前テストをして臨
んで、翌年はトップになった」という話しも聞かされた。
  学力テストというのは、だいたい毎年同じ平均点の設定のもとに問題が作られていて、実施
する年によって5点も10点も極端に平均点が変わるようでは、学力テストの意味が無いという
事も聞かされた。しかし、そういう視点でみると2003年の実施当初と2005年の3年目は、10点
近く平均点があがっている学年があるが、果たしてこれは本来の先生・生徒の努力の結果な
のだろうか、もしかして事前模試の結果なのではないかと考えざるをえないのである。
                                                                               
 │ 小学校 │   国語     │ 算数 │    
 │ │ 2年│ 3年│ 4年│ 5年│ 6年│ 2年│ 3年│ 4年│ 5年│ 6年│    
 │三次市│2005│ 81.2│ 74.5│ 72.3│ 79.3│ 77.0│ 89.0│ 81.5│ 79.5│ 79.5│ 75.5    
 │全体│2003│ 79.8│ 71.3│ 69.9│ 72.9│ 71.3│ 89.2│ 80.6 │ 78.6 │ 73.4 │ 65.6 
 │全国│2005│ 76.8│ 72.8│ 71. │ 74.9 │ 73.9│ 86. │ 80.4 │ 78.3 │ 74.8 │ 69.7     
 │ │2003│76.6│ 73.0 │ 71.5│ 74.8│ 74.0 │85.9 │ 80.0 │ 78.0 │ 75.2 │ 70.5 

◇学力テストの公開は、「学力」をあげる役にたったのか?
 2001年に前の市長が急死し、選挙の結果、「教育を日本一にする」と公約を掲げた今の市長
が当選した。そして、市の方針として一方的に2003年度より、三次市独自の学力テストを実施
し、学校・学年別の平均点を市広報とホームページに掲載し続けてきている。
2003年6月にその情報を知った私たちは「学力テストの公開を憂う親の会」を作り、「学力テスト
の学校・学年別平均点の公表は、学校間に優劣をつけることとなり歪みをもたらす」として反対
署名を提出したが、市は実施に踏み切った経緯がある。
 さらにあろうことか、署名を提出した保護者の職業を調べ、反対しているものは「先生かが何
割」「市の職員が何割」と市政懇談会で発表し、「市の方針に反対する先生には、市にいてもら
わなくてもいい」とまで言い放ったことに対して、私たちから猛抗議をうける中で公開を強行して
きたのである。
 市長のいう「教育日本一」とは、単純に「有名大学に多数合格する」ということに他ならない。
まるで学校は有名大学へ入学するための下請けの「塾」か何かとと考えているかのようで、そ
のためには手段は選ばないということであろう。学校は先生はもちろん生徒・児童も規則・管理
で縛り付け、一方で競争に駆り立てるということが行われている。「学校は落ち着いてよくなっ
た」と内情を知らずに外から眺めれている人からは見えるかも知れないが、先生や子どもたち
の顔が生き生きと輝いているかといえば決してそうではない。病気で休養する先生、高校の中
途退学、小中学校の不登校は大変に増加している。
  学力テストを改竄した小学校の校長先生は、「学校をよく見てもらいたかった」と市議会代表
者会議で語ったと新聞に報じられた。しかし、ただ単純に「よく見てもらいたい」という理由で、
校長が児童のテストを書き換えて点数を上げたとは考えにくい。校長の「よく見てもらいたい」と
いう言葉の背後に、大変な重圧があると考えざるを得ないのである。
知り合いの校長に聞いても、市から何が言われているのか頑として口は堅い。しかし、その堅
い表情こそ、市から平均点アップを強く言い渡されていることが想像できる。この度のテストの
改竄が報道されるまでは、折に触れての挨拶の中に、わが校の平均点があがったことのみな
らず、前年に低かった学校が今年度は非常に上がった例などを引いてPTAへの挨拶の中でも
語られていたのである。広島県の南部の某教育委員会では、県内学力テストが平均点以下だ
けの学校長の研修会があると聞いたが、三次市ではどうなのだろうか、それ以上のことがある
のではないかと思ってしまうのである。
  学力テストの学校・学年別平均点は何のために公開していたのだろうかと、その実態が明ら
かになってみると、子どもに学力をつけるためでもなく、先生が児童・生徒の学力の到達度を
見るためでもなかったことがはっきりとしたわけである。先生は校長に尻を叩かれ、校長は市
長の顔色を窺い、ひたすら市長の公約、「教育日本一」の公約が果たされていることを証明す
るために、子どもたちも先生も動員され、保護者や市民にその虚像を見せていたことが早くも3
年で暴露したということである。

◇まだ公開を継続する?。「ここに到って、何をかいわんや」
  2004年に旧三次市と周辺7市町村が合併し新制三次市となると、教育長も市長の「市民の声
を聞かせて下さい(ただし私の政策に反対する者は除きます)※カッコの注釈は私の見た現状
である」という姿勢を見習ってか、「外部の対応は次長にさせる」と直接会うことを申し入れても
会わないと逃げの姿勢をとっている。そこで、知人が教育長にアポをとって会う日時を設定した
ので一緒に会わないかと誘われ、実に2年ぶり、1月末に教育長と話しをすることが出来た。
  三次市では「偉大なるイエスマン」といえば、○○党の幹事長のことではなく、わが市の教育
長のことであるともっぱらの陰の声であるがこの度改めてそう確認した。市議会や市政懇談会
という市長と一緒の場ではまさに借りてきた猫。しかしその場に市長がいなくても、質問への答
えに詰まると、「私も自分だけで判断するのでなくて色んな声もきかないといけない」と逃げに回
る姿は、教育は市とは独立した行政とは名ばかりの実態が透けて見えてしまう。
 話しをしていくうちに「学力テストの改竄とテストの学校・学年別の平均点の公開は関係がな
いという事だけは決して譲るな」と強く言われているのだろうなーと、その一点だけは、何の説
明もなく、「関係がない」を教育長は繰り返す。「改竄は個人の倫理観の問題であり、公開が理
由ではない」と。そして「学力テストの意義を伝えることをさらに徹底する」と。
 そこで私はこう問うてみた。「では教育長、同じ学力テストをやっても公開しない場合と公開す
る場合、テストを改竄してまで平均点をあげようと思う気持ちは同じだろうか、違うだろうか」と。
さすがに教育長も、「それは公開するほうが何としてでもという思いは強くなるだろう」と答えた。
でもすぐ後に、「公開と改竄は関係ない」とくるのである。
「学力テストをやっているところでも、公開していないところでは改竄はないじゃないですか」と
私が畳みかけたら教育長は一瞬だまってしまった。あの一瞬は何だったのかと思う。その通り
だと思って詰まったのか、いや改竄はあるということを知っているから詰まったのかどちらかは
わからないが。
 教育長には、市民の税金をつかっているので市民に情報公開しなければいけないから学力
テストの学校・学年別の平均点を公開するといいながら、テスト改竄の情報は新聞に報道され
るまで隠してきた実績がある。最初に自分の任命権者の「神の声ありき」で教育長に論理的説
明を求める方がどだい無理なことをこの度も実感する。

◇再び学力テストの非公開を求めて署名を
 三次市の学力テストの改竄問題を通じて、学力テストの公開が、教育現場に歪みをもたら
し、市広報にも事前模試を行って平均点をあげるというような実際の「学力」とは異なる虚偽の
点数が掲載されていたかということがあきらかになった。そして、市の学力テストのみならず、
県の学力テストでも同じことが行われていることも知らされた。教育は一人ひとりの生きる力を
伸ばすためにあるのであり、「学力」はその一つであるにすぎない。学力偏重が教育を点数至
上主義へと駆り立てればいかなる人間になるか、いまの非教育的なあり方を力の論理で押し
進めようとしている市行政トップを見れば明らかである。でもまだ子どもたちは健全さを持って
いると思う。なぜなら、そのような大人を先生の本音を見抜く感性をもっている。一番大変なの
は、学力テストの公開はおかしいと思いつつも実行せざるをえない先生であるのだか、それが
改竄まで引き起こす重症の状態であることは見逃すことはできない。またそうした先生の雰囲
気が子どもたちの教育環境として良いわけがないということは言うまでない。
 しかし今のままでは来年からも学力テストの公開は継続されると思われる。教育長は「(検査
結果は)可能な限り公開したい」と答えた新聞では報じているし、市長自身が「ぶれない小泉」
よろしく「ぶれない」ことを自分のスタイルとして売っているので非公開を勝ち取ることは容易な
ことではない。しかし、広く市民の良心に訴えて、以下の2点を求めて今、第二次の署名活動を
市民全体へ呼びかけて展開している。

 1.三次市広報への、学校別・学年別の公開を止めること。
 2.「学力テストの改竄」問題の経過や要因等の分析・改善計画等を全市民に明らかに
   すること。

  時あたかも、マンションの耐震偽造、BSE問題、ライブドア粉飾決算、防衛庁談合問題と社
会の偽装問題が噴き出して問題になっている時である。学力テストの非公開を求め署名に市
民の反応は悪くない。教育改革の名の下に「教育日本一」を鞭と飴で押し進めようとしてきた市
長の虚偽と横暴をこれ以上許すわけにはいかない。

                                                                               
【学力テストの非公開を求める取り組み】                                      
│○2003年6月30日/7月10 日日 要望書・署名提出160人  「学力テスト」の公開を憂う親
  の会
│ 2003 年7月 三次市広報で学校・学年別平均点公開(以後3年間継続)           
│    8月25日 署名の職業を調べたことへの抗議文提出−何度かの教育長へ抗議  
│◇2004年11月1日 中学校区自由化へ 反対の申し入れ                            
│○2005年12月2日 再度学力テストの非公開を求める要望書提出                    
│   12月28日抗議文提出                                                  
│○2006年 3月 第2回署名提出予定                                           
│                                                                             
│ 2005年 三次市学力テストの答案改竄をめぐる一連の新聞報道                   
│*05.4.20.21 第3回(2003年度よりスタート)の三次市独自のCRT(学力テスト)実施
│*05.7月   三次市広報に学校学年別の一覧表発表                             
│【A中学校 教務主任答案改竄】                                               
│*05.8月2日 市議会議員から「A中学校でCRTの改竄がおこなわれたのではないか」の電
  話を市教委がうける
│*05.9月1日 先の議員から「教務主任が生徒の前で答を消したと聞いている。再度調査す
  るように」と要請。
│*05.9.月26日一般質問で教育長が「調査の結果、改竄はおこなわれていない」と答弁。
│【B小学校】                                                                 
│*05.6月16日匿名の女性から市教委へ「テストの改竄のうわさがある」「B小学校」といった
  内容の電話。
│* 市教委は調査。校長は自分の修正を認める。                                  
│△05.9月26日三次市議会一般質問で教育長が、「調査の結果改竄はおこなわれてい  
│       ない」との虚偽の答弁をおこなう。                              
│☆一連の経過・新聞報道をホームページにアップしています。                     
│            http://www.saizenji.com/page048.html                   




トップへ
トップへ
戻る
戻る