小武正教
◇はじめに−「国益」の名の下に
二00五年三月二十日、米・英軍による一方的なイラク攻撃から二年を迎える。イラクでは、
昨年には暫定政権が発足し、今年国民選挙が行われるに至ったたが、米軍の実質占領統治 の状況は変わっていない。メディアの伝える回数は減っているが実際に米軍等への抵抗運動 は続いており、米軍を始めとする「占領軍」の死者も一五百人を超え、イラク市民の死者に至 っては十万人をゆうに超えると昨年暮れの段階で報道されている。
日本の政府も二00三年十二月に自衛隊イラク派遣を閣議決定し、「自衛隊派が派遣される
のは非戦闘地域であること」「人道復興支援活動をおこなうのであり、治安維持などを担うもの でないこと」等の制約の下、二00四年一月から自衛隊の派遣が行われて、陸・海・空の三隊 一000人規模の自衛隊員がイラクの地で活動を続けている。
政府がいくら「非戦闘地域に自衛隊は派遣する」といっても、いみじくも国会の場で小泉首相
自身が、「イラクのどこが戦闘地域でどこが非戦闘地域か私にわかるわけがにない」「自衛隊 のいる地域が非戦闘地域だ」という言葉に象徴されているように、「戦地」への自衛隊派遣であ ったことは明白である。自衛隊を派遣するが為の何百億というお金をかけ、
NGOに委ねるなら三十分の一の費用で給水作業等をおこなうことができる「人道支援活動」な
るものを自衛隊に行わせるのはなぜか。まさに、「戦地」であるイラクの地に、自衛隊を派遣 し、そこに留まらせることそのことが政府の目的であることもハッキリしている。小泉首相が多 様する「国益」という言葉にそのことが象徴されている。
◇奥大使・井上書記官の死への叙勲と日本人人質へのバッシング
二00三年十一月二十九日、イラクに派遣されていた奥大使と井上一等書記官がイラク北部
のティクリートで何ものかに襲撃されて死亡するという事件が起きた。イラク戦争がはじまって から初めての死者ということもあり大変大きな記事となった。十二月六日の葬儀の様子を日本 経済新聞社は次のように伝えている。
「イラクで復興支援業務中に殺害された外務省の奥克彦大使(45)と井ノ上正盛一等書 記
官(30)の葬儀が6日午前11時過ぎから都内の青山葬儀所で両家と外務省の合同 葬として 営まれた。川口順子外相が葬儀委員長を務め、小泉純一郎首相をはじめとす る政府関係 者や衆参両院議長、ベーカー駐日米国大使ら在京の各国大使館関係者など 1500人以上 が参列し、志半ばで倒れた両氏のめい福を祈った。
葬儀に先立ちイラク復興での功績をたたえて贈られた奥大使の旭日中綬章、井ノ上一
等書記官の旭日双光章を外相が祭壇に供えた。−中略−(小泉首相は)「お2人とも ご家 族の誇りであると同時に日本国、日本国民の誇りでもあります。私たちはあなた 方の熱い 思いと功績を決して忘れません。政府はあなた方の遺志を引き継ぎ、国際社 会と協力して イラクの復興に努めていきます」と締めくくった。」
イラクへの自衛隊派遣の政府の閣議決定がなされたのがそのすぐ後の十二月九日である。
大使館員二人の死とその葬儀は自衛隊をイラクへ派遣するためのセレモニーであったといえ るのではないか。「国の意志に従い、国のために死んだものには、国はこのように讃えていく」 という姿勢を国民に見せつける場でもあった。葬儀にあたっては間髪をおかず政府は奥参事 官大使に、井ノ上三等書記官をそれぞれ二階級特進させている。殉職者を二階級特進させる 慣例は、かつて日本軍でも行われおり、今でも自衛官や警察官、消防官の世界に引き継がれ ている。さらに「国家又は公共に対し功労のある方」に送るとする勲章(奥大使には従四位と旭 日中綬章授与、井ノ上一等書記官は従七位と旭日双光章)が授与している。
二00四年四月八日、イラクで日本人三人(高藤菜穂子さん・今井紀明さん・郡山総一郎さ
ん)が人質となり、3人を拉致したグループから日本政府に自衛隊の撤退を要求される事件が 起きた。全国各地から「人命尊重し、自衛隊を即時撤退させよ」という声が上がった。広島の 地でも原爆ドームの前で集会やデモがくり返され、私の地元三次でも駅前街宣をくり返した。し かし小泉首相は「テロには屈しない。従って自衛隊は撤退させない」の一点張り、まさに最初に 結論ありきというスタンスが見え見えで、政府の意志に反して行動した、まして政府の方針に反 対している国民の生命など一顧だにしないという姿勢が表れていた。政府は何ら有効な手だて を打てないままの中、アルジャジーラなどを通しての犯人グループへの呼びかけや、イラク聖 職者協会からの働きかけで4月15日に3人は解放されが、人質とその家族に対して、政府やメ ディア、それに扇動される形で一般国民による「自己責任論」というバッシングの嵐が吹きあれ たことは忘れることは出来ない。、
読売や産経などは、人質家族の政治的背景とか、家族の一部が激高して自衛隊の撤退を求
めた、デオ撮影の際に演出を受けたとか等々を取り上げ、あたかも国家の方針に反して行動 する者に対する「みせしめ」と言わんばかりに批判し、無数のメールやFAXを家族へ送りつけ られるという事態が生じたのである。人質となった人間が同じ民間人でも、政府の許可の下に イラクに入った報道陣やら企業の人間であったらバッシングをしかけた政府やマスコミの対応 は違っていたことであろう。逆にイラク戦争を始めた当事国のアメリカのパウエル国務長官か ら「危険を知りながら良い目的のためにイラクに入る市民がいることを日本人は誇りに思うべ きだ。もし人質になったとしても「危険をおかしてしまったあなたがたの過ちだ」などと言うべき ではない」とのべる談話が紹介されたり、フランスのルモンド紙が「日本人は人道主義に駆り立 てられた若者を誇るべきなのに、政府や保守系メディアは解放された人質の無責任さをこきお ろすことにきゅうきゅうとしている」との報道が日本の記事となり目を引くありさまであった。
十月二十七日には、イラクで再び香田証生さんが人質となり、自衛隊の撤退を要求されると
いう事件がおきた。小泉首相は即座に自衛隊の撤退を拒否、テレビに映し出される憔悴した 両親のコメントは、自衛隊の撤退などには一切ふれず、「元気でもどってきてほしいとひたすら 祈っている」というものだった。しかし今回は犯行声明を出したザルカウイグループによって香 田さんは十月三十一日に遺体となって発見された。両親は「皆さんに非常にご迷惑をおかけし ました」という謝罪の言葉を繰り返し、さらに政府に対しては、「一介の青年のため、国を挙げ て対応していただきありがとうございました」と感謝の言葉を述べたと報道された。4月の人質 事件におけるバッシングが日本国民にもたらしたものがここに表れているのではなかろうか。 当の遺族が政府と社会に対する「お詫び」と「感謝」しか述べることが出来ない、怒りや不満、 そして悲しみを公に露わにすることの出来ない社会が作られつつあるのを感じる。それは戦 前、戦死した遺族の下に遺品が届けられた時、悲しみを押し殺して、「ありがとうございます」と 感謝の言葉で受け取らなければならなかった時代とそんなに遠く離れていないように思われ る。
そして政府のこの時の本音は、イラク派遣を引き続き延長しようという計画に影響を及ぼさな
いようにするかということであり、新聞には「首相、薄氷踏むイラク対応 派遣延長論議に影響 も」という文字が踊っていた。
◇戦死者を想定した叙勲の変更、補償金は1億円
イラク戦争開戦から二年、幸いにも自衛隊員に死者は誕生していない。もし、自衛隊に「戦
死」者が出たとき、政府はどのような対応をするか、政府は当然のことながら想定してきたに 違いない。そしてサマワの自衛隊宿営地にロケット弾が何度も着弾したり、イラクで活動をする イラク占領に反対する武装勢力などから日本も名指しで非難されている以上、いつ「戦死」者 が出てもおかしくない状況は続いている。
政府は自衛隊の「戦死」者を視野にいれ、2000年から「栄典制度の在り方に関する懇談会」
を発足させ、2002年8月に「栄典制度の改革」を行っている。その一項目にこうある。
「春秋叙勲とは別に、警察官、自衛官など著しく危険性の高い業務に精励した者を対象
とする叙勲の種類を設け、これらの業務分野における受賞者数を増やすことにより、受 賞
年齢の引き下げを図る。また、生命の危険を伴う公共の業務に従事し、その職に殉じ た者の 功労をより高く評価するとともに、民間人が生命身体を犠牲にして公共のための 行為を行っ た場合にも、適正な評価を行う」
さらに「勲章の授与基準」が2003年5月に閣議決定されているが、その最後に「緊急に勲章を
授与する場合−各号の一に該当する者に対しては、その功績の内容等を勘案し相当の旭日 章を緊急に授与するものとする」として一項が設けられている。
(1)風水害、震火災その他非常災害に際し、身命の危険を冒して、被害の拡大防止、救 援又
は復旧に努め、顕著な功績を挙げた者。
(2)身命の危険を冒して、現行犯人の逮捕等犯罪の予防又は鎮圧に顕著な功績を挙げた
者。
(3)生命の危険を伴う公共の業務に従事し、その職に殉じた者
(4)その他特に顕著な功績を挙げて、緊急に勲章を授与することを必要とする者。
奥大使と井ノ上一等書記官の死には、この制定後約半年であり、葬儀においてすぐに「緊急
の叙勲」が適用されたわけであろう。それは当然、これから予想される自衛隊の「死」がに対し ても適用されるべく改革されたものであることは言うまでもない。
さらに政府はイラクに自衛隊を派遣するにあたり、自衛隊員の処遇を改善するため、「任務
中に死亡または重度障害になった場合に支給される弔慰、見舞金の最高限度額を、現行の 6000万円から9000万円に引き上げ、派遣に伴う特別手当も1日あたり3万円としたのである。さ らに自衛隊員が任務中に死亡した場合、首相から特別報奨金(最高1000万円)も支払われる ため、自衛隊がイラクで「戦死」した場合は1億円が支払われるということになったのである。
◇イラクで「戦死」した自衛隊員はどこに祀られるか
ではイラクで自衛隊員が死亡するという状況がうまれた時、その自衛隊員はどこに祀られる
だろうか。それが今、自衛隊員の「志気」を如何に保たせるか、別の言い方をすれば、「国家 のために生命を捧げさせることが出来るか」ということに繋がって大きな問題として政府は考え ている。
日本を「戦争する国家」にするためには、「国に生命を捧げたものを祀り、後に続け」という所
謂、靖国思想を体現した施設がどうしても必要となってくる。靖国神社への1985年の中曽根首 相公式参拝がそうであるし、20001年からの小泉首相公式参拝も、国家の戦前の戦死者の慰 霊追悼という意味以上に、新たな戦死者をいかに産み続けるかということに主眼があることは いうまでもない。「国のために死んだものを国が祀らなくて、新たに国の為に死ぬ者は生まれな い」という85年の中曽根発言がそのすべてを物語っている。
しかし、現行憲法下において、政府や自衛隊が、自衛隊員を靖国神社や護国神社に祀るこ
とが出来ないことはいうまでもない。憲法第89条の「政教分離規定」によって、公的機関が一宗 教法人である靖国神社や護国神社に係わることは出来ないからである。しかしながら、戦後に おいても自衛隊員が「殉職」した場合は各県の護国神社に祀られている。(しかし、戦死者に限 定されていた“祭神”を靖国とは別に加えることに難色を示す護国神社などもおり、全てではな い)
今自衛隊員がイラクで死亡すれば、まず東京市ヶ谷にある「メモリアルゾーン」に祀られる。
「メモリアルゾーン」には自衛隊殉職者慰霊碑が建てられ、追悼式は一九五七年からすでにお こなわれ、総理大臣の参拝もすでに一九五七年の岸、六二年の池田、八八年の竹下と続い て、九六年の村山からは毎年出席が続いている。そして二00三年九月に「メモリアルゾーン」と して整備を整え、当時の石破長官は拶に立ち、慰霊碑地区整備に至る経緯について触れなが ら「本日この場において、御霊の御遺志・御偉業を自衛隊員の鑑として永く顕彰するとともに自 衛隊の任務完遂のため最善をつくす」ことを誓ったと報道されている。
しかし、「メモリアルゾーン」における顕彰で、死者の顕彰が澄むと考えていないからこそ、現
憲法下における「靖国神社からのA級戦犯の分祀案」や「無宗教の国立追悼施設の建設」等 の意見が政府の側から出されてくるのである。国民の誰もが認知する「国家に生命を“捧げ た”者を顕彰施設」を、一時も早く作りたいということに、逆にイラクにおける自衛隊員の死をこ そ利用しようとしているのではないかと思わざるをえない。権力をにぎった者はとことん国家の 名の下に国民の死を利用しつくして、その目的を達成してきたのであり、それこそまさに靖国 の構造・靖国思想である。
◇本願寺の褒賞制度の問題点
奥大使と井ノ上一等書記官がイラクで殺害され、私の脳裏に浮かんだことの一つに、二人が
本願寺派の門徒ではあるまいかということであった。実は本願寺派にも現在褒賞制度なるもの があり、毎年五月と十一月に褒賞授与が行われている。宗門法規の褒賞規定には次のように なっている。
第一章 褒賞の種類
第一条 宗門の褒賞は、左の二種とする。 一 特別褒賞。 二 普通褒賞。
第三条 普通褒賞には、左に掲げる種類に、これを分ける。
一 褒詞。
二 等級 優特、甲特、特等、一等、二等、三等、四等及び五等の順を設け、各等を
一級乃至七級の次第に区分する。
三 施功状 四 顕功状 五 感謝状 六 表彰状 七 褒物 左の通り分ける。 イ
院号法名 ロ 蔵版物 ハ 紋章付什物 ニ 肩衣 ホ 門徒式章 ヘ 念 珠
第二章 褒賞の事由
第八条 褒詞は、僧侶、寺院、寺族、門徒又は宗門に属する団体で、宗門又は社会に対
して特に功労があったもの若しくは他の模範となる善行を行ったものに、これを 授与 する。
特別褒賞の場合も事由はほとんど代わりがない。
褒賞は、褒賞委員の審査を経てこれを授与することに「褒賞手続」に定めているが、国から
叙勲されたような場合には、住職の申請によってほとんどそのまま「宗門褒賞」となっているの が実状である。
本願寺はまがりなりにも、米軍のイラク戦争に反対の声明を出してきたし、自衛隊のイラク派
遣にも反対の意思表示をしてきている。一方で米・英軍のイラク戦争とそれに追随する自衛隊 のイラク派遣を批判しながら、他方では日本政府のイラク政策の最先端で働いて殉職し、叙勲 された人を、そのまま褒賞するというのでは本願寺教団の一貫性がないばかりか、再び本願 寺が国家による死者の利用・顕彰という靖国状況に加担することを恐れたのである。
そして案の定、井ノ上一等書記官は宮崎県の本願寺派の門徒であることが判明した。申請さ
れれば、今の教団において宗門褒賞を出さない理由が成り立たない。しかし、結果として井ノ 上一等書記官の宗門褒賞の申請は上がってこなかった。もし申請が上がり宗門褒賞がなされ たならと考えるとゾッとするのである。イラクに派遣された自衛隊員が死亡した時、すでに述べ たように政府は大々的にその死を顕彰していくに違いない。それが本願寺派の門徒であって 時、宗門褒賞の申請が上がってきたとした時、前例を作ってしまていたら、はたして「NO!」と 言えるかということである。現行の宗門の褒賞制度の在り方、特に褒賞の事由について問題と して論議してきたのだが、「人道世法をまもり」という宗門法規の宗風全体に係わる問題でもあ り、一朝一夕にはいかない。そこでとりあえず、教団として出した声明に反するような宗門褒賞 に楔を打つために4団体が共同して総長への申し入れを行った。
浄土真宗本願寺派総長 不二川公勝 様
2004年1月19日
真宗遺族会事務局長 菅原龍憲
浄土真宗本願寺派反靖国連帯会議事務局長 木村真昭
備後靖国問題を考える念仏者の会事務局長 小武正教
国立追悼施設に反対する宗教者ネットワーク事務局長 山本浄邦
(連緒先)FAX O729一78−0850
貴職におかれましてはますますご清祥にて宗務にご精励のこととお慶び申し上げます。
新年より、首相の靖国参拝への抗議・要請文提出等、ご多忙のことと存じます。
さて、ご承知のように私たちの平和への願いに反して、政府は「イラク人道復興支援特措法
に基づく対応措置に関する基本計画」により、自衛隊をイラクに徐々に派遣しています。
これに対して宗門としてすでに反対の意思を明確にされておられることほ、さまざまな報道を
つうじて私たちにも伝わってまいっております・この意思を最後まで貫いていただくことは当然 のことと考えておりますが、加えてこの意思と矛盾すると思われる宗門の制度について、私た ちの要望を申し述べたく存じます。
それは、国家の栄典制度と連動した褒章制度の問題です。政府・与党は5年ほど前から自衛
隊異の公務死に対する栄典制度を整備・強化する考えを明確にし、自衛隊員が今回のイラク 派遣のような任務を「誇りをもって遂行」でさるように、栄典制度を改革しました。
つまり、新たな戦死を国家が賛美するシステムとして栄典制度が機能しはじめているのです。
一方、宗門の褒章制度は国家の栄典制度と一体化しているため、万が一、自衛隊員に戦死
者がでて国家から叙勲された場合、現状のままでは宗門に所定の申請があれば事務手続さ 上の不備がないかぎり宗門の褒章制度に基ついた対応がなされると考えられます。
宗法には「宗門若しくほ社会に対する功労又は他の標範となる善行に対して、宗則で定める
手続さに従い、褒章を授与される」とあります。これでほ宗門が「社会に対する功労又は他の 模範となる善行」として戦死を賛美することになってしまいます。
戦争を賛美した宗門の過去の過ちに学ぶならば、再び宗門が戦死を賛美することとなる現
行の褒章制度を放置しておいていいものでしょうか。
以上の問題点をご理解いたださ、早急に現行の褒章制度を改定し咤ださますよう、強く要望
いたします。
南無阿弥陀仏
この要望は、教団にとってもタイムリーなものでもあったし、私たちからの要望を取り入れ、
素早く具体的な対応に結びついていった。宗報9月号に二00四年四月二十日に開かれた第一 回本部会議の要旨が以下のように掲載されている。
(協議内容 宗門褒賞制度について)
現在、日本の自衛隊がイラクに派遣されています。イラク派遣終了後、国が自衛隊員に対
し叙勲の対象とすることが考えられます。宗派からは総長名で2度にわたり小泉首相に大使、 自衛隊イラク派遣を取りやめるよう要請文を出しています。現行の宗派の褒賞制度は、叙勲 の対象者は住職の申請により褒賞を行っており、自衛隊員など、今回のイラク派遣関係者が 叙勲の対象となった場合に、褒賞を行うべきかどうか協議を行いました。
この問題について、宗派内の任意団体から基幹運動の視点から叙勲しないようにとの要望
も出されており、関係する各委員会で協議を行いましたが、いずれの委員会等でも継続審議と なっています。
本会議では、反対しているイラク派遣に関する叙勲である点、基幹運動の重点項目の「非
戦・ヤスクニの課題」の点からも褒賞を行うことには矛盾がある。また、国の後追いとなってい る褒賞規定の運用そのものにも問題があるのではないか、といった意見が出されました。
協議の結果、イラクに派遣された自衛隊員の方を宗派の褒賞対象とすべきではない、との方
向性が出されました。
◇おわりに
今の日本の状況は、日本を「戦争する国家」へと「国のかたち」を変えていくのか、やはり「平
和憲法」の理念を生かした「戦争をしない国家」に留まるのか、選択の最終段階にさしかかって いる。政府のイラク戦争への自衛隊の派遣への執念とそれへの栄典制度の改革等の準備を 見るとき、すでに既成事実として外堀が埋められていることを思わざるをえない。しかし、叙勲 という勲章とお金による補償でもその体制は完成しないこともまた露わになってきた。それが 国家における戦死者の追悼というきわめて宗教的課題が残るのである。自民党が2007年に目 指している憲法「改正」では、政教分離規定を見直して、首相の靖国参拝をクリアーしようとい う意見がすでに出されている。それは、靖国参拝にとどまらず、国家による追悼に道を開くもの であることは十分予想される。
本願寺教団は国の侵略戦争に協力し推進した過去を持ち、特に戦死した兵士に「軍人院
号」を出して顕彰した歴史をもっている。再びおなじ過ちをくり返さないためにも、靖国国家護 持や靖国公式参拝のみならず、それにつながる一つ一つに楔を打ち込むべく、ハッキリと意思 表示をしてこそ、今この時代に本願寺教団の存在価値があるというものである。そのために、 これからも教団の姿勢を糺すべく尻を叩きつつけねばならない。
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