新 福山市長 備後護国神社奉賛会会長を辞退

備後靖念会通信
  仏暦2548年 10月号  No163 (文責 池田静思)
                

  戦後、福山城の北の現在地に備後護国神社として合祀再建された頃−1957年(S32)−か
ら、ずっと福山市長が奉賛会長となり、招魂祭などおこなってきた。戦中、福山41連隊兵舎の
西、現福山市立体育館あたりに建造中で完成間近であった護国神社を、敗戦直前の1945年
(S20)8月の「福山空襲」で焼失したからである。招魂祭は今は名を変え、福山バラ祭の前に
福山市戦没者追悼式として、宗教色のない(?)行事に衣変えして、護国神社前の福山城公園
広場で行われている。
 さて、三好章前市長が突然に病気で辞職し、間もなく亡くなられたあと、9月5日、市長選の
投票があって、羽田皓氏が福山市長に当選された。三好前市長とは15歳も年下であるし、戦
時体験もないから護国神社に対する想いもずいぶん異なるに違いないと思っていた。
 9月13日、靖念会の学習会の日、午前私は備後護国神社の社務所を訪ね、神社側が奉賛
会長職を新市長に要請していないことを確かめた。江種宏之宮司が連休明けの9月21日に羽
田新市長に面会し、就任を要請する旨の情報を入手した。それなら、私どもの会として、それ
以前に新会長に会い、「就任要請の拒否」を早速に申し入れなければならないと判断した。幸
いにもその同じ日の午前10時半からの面会を取り付けた。そこで、次のような「申し入れ書」を
作成して望んだ。

  2004年9月21日
  福山市長
  羽田 皓様
  備後護国神社と町内会の関係を考える会
  〈 代表 〉 池田静思

    申し入れ書
 
    私たちは三好章前福山市長に対し、備後護国神社の奉賛会長になっていること、そして同
神社の初穂料」を福山市内の町内会長に集金依頼をしていることについて、これまで3回にわ
たり「申し入れ」をして問題点を指摘してきました。しかし、いっこうに改められず、今年もくり返
されてます。(別紙資料)
   今、新たに市長となられた貴職が、前例を踏襲して再び備後護国神社の奉賛会長を引き
受けられことのないよう、ここに強く要望いたします。
  言うまでもなく、公職にあるものが賛助団体である「奉賛会」の長として特定の宗教法人に
関わることは、憲法20条「信教の自由」、89条「政教分離」の原則に照らして明らかに違反する
からです。 すでに2002年4月の「自治会神社費拒否訴訟」佐賀地裁判決(確定)において明確
となり、そして昨年2003年3月、福井市長が奉賛会長を辞任し、さらには福井市では自治会
(町内会)に神社の寄付金集めを依頼していたことも見直されています。
  そうした事態をしっかり踏まえ、福山市長においても、まず長年にわたる悪しき慣例をうち
  破りこの際、市長に対して備後護国神社の奉賛会長就任の要請ありとも、毅然とした態度
で拒否され.ますよう、重ねて要望致します。
 
   尚、これまでの「申し入れ書」とその報道記事、また「佐賀地裁判決」及び福井 市関係の
  報道記事を参考資料として添付します。
 
                        (連絡先)721-0921 福山市大門町大門625
                池田静思  TEL (084)941-1474

 私たちとの面談は15分ほどであった。市長秘書の広本課長も同席しており、別に報道記者も
数名傍聴していた。
 これまで3回の三好前市長への「申し入れ」の経過を話し、今回のものを手渡して読み上げ、
そのほか他市の状況にも言及し補足した。前市長とは世代の異なる羽田新市長に、宛職とし
て奉賛会長を請け負うことのないよう、決断を迫った。羽田市長は言質を握らせず、「よく検討
して個人として判断したい」と多くは語らなかった。午後、備後護国神社側の要請を受けて、側
近と相談した上で慎重に判断したいという姿勢であったが、「個人として」という言葉には、これ
までの三好市長の対応ぶりを十分意識していると感じられた。返答は後日連絡していただきた
いとお願いして辞した。当日の様子は、新聞各紙が次ぎのように報道した。夕刻に訪ねた江草
宮司が、どのように奉賛会長就任を要請したか、おおよそ推測されるであろう。(新聞報道 資
料1)
 10月4日、羽田市長は定例の記者会見で、「奉賛会長の就任は辞退した。しかし、同会の理
事は受諾する」と述べたようである。市長から直接の回答は私たちには伝えられなかった。(た
だ、新聞社からは私宅に電話があったとのこと)(新聞報道 資料2)
 おそらく歴代の福山市長が長年にわたり務めてきた奉賛会長職を蹴ることには、強い抵抗
があったに違いない。−日本国憲法施行と共に「宗教法人法」が制定され、神社が法人化され
るなかで、憲法の“信教の自由”という基本的人権が“政教分離”の原則によって担保される仕
組みが、広く市民に周知されないまま、今日の状況に至っている。そのことを羽田市長の側近
に理解している人がいるであろうか。−公職にあるものは、私的な〈ひとりの人間の人格、人権
として、信教の自由を保障されている〉信教の領域に対して、「いっさいの公的干渉があっては
ならない」とするのが憲法の精神であり、公職にある何人も、それをゆがめてはならないので
ある。
 羽田さん個人が、戦争にかり出され戦死した兵士や軍人に対して、(身内・親戚など関係者
は多くおられようが)そうした人たちに対して、どんな宗教的感情を心のうちに持っておられて
も、それはおくまで個人的なもので、問題とするべきではない。公職にあるときは、そうした特
定の信者組織(賛助団体)に所属したり、宗教的儀礼を催行(参加)することを、憚り避けても
らわないと市民は迷惑するのである。
 信仰という宗教の行為は、儀礼に出席するとか寄付するとかの形に表れる。信仰の領域と
公的道徳との違いは、公職に就く限り、はっきりと区別してもらわなければならないのである。
 奉賛会の「会長」には、私個人はふさわしくない。「理事」の立場なら“やぶさかでない” と判
断されたようである。「奉賛会の意義をキチッと理解された人こそふさわしい」と先輩たちに敬
意を表して辞退理由を述べておられるようだが、礼儀としてさすがである。
 「護国神社の宗教的性格をよく理解して、奉賛会の意義をキチッと理解する」のは、戦後育ち
の人間には、なかなか困難なことであろうと思われるからである。
 それにしても、歴代の市長が務めていた奉賛会長を、市長として辞退するが、個人として備
後護国神社奉賛会の「理事」になら“就任”します。新たに「その護国神社の信者団体の理事と
して、その運営に個人として参加する」と決断したのである。
 三好さんと同じように羽田さんも、また「寄付金」ぐらいのつもりで「備後護国神社の初穂料」
の集金を、「市長」と表には名を出さず、奉賛会理事として福山市内の全町内会に依頼する任
務に関与されるつもりなのであろう。

 「申し入れ」に対する市長の回答は、残念ながら私たちの会に対して直接には届けられなか
った。そこで次の手として、羽田福山市長に“今回の判断”に関して「公開質問状」の形式でた
ずね、文書で回答してもらうようにしてはどうだろうか。
 また、今年も9月初め、奉賛会長・三好章名義で各町内会長宛に郵送された“初穂料”の集
金依頼については、今後・来年に向けて、その違法性を私的し、町内会(自治会)組織を利用
せず、別の方法で集金するよう。市役所の当局に強く働きかけて行かねばならない。有効な具
体的手だてを模索してゆきたい。
 
 ※備後護国神社法損壊の役員構成など、「規約」を知る必要がある
 ※奉賛会というに福山市町内会(自治会)連合会の名簿すがどうして流出しているのか。
 ※福山市役所と準公的団体である市町連との関係を正してゆくには、どうすればよいか。
 ※市議会議員さんたちとも意見交換する機会をつくりたいものだ。

なお、次の段階の第一歩として10月26日に、福山市役所市長秘書室広報課と市民生活部へ
資料1.2の内容の申し入れを行った。


                           2004年10月26日
 福山市長
 羽田 皓様
  備後護国神社と町内会の関係を考える会
  〈 代表 〉 池田静思

                       重ねての申し入れ書
 
  私たちは前回9月21日、貴職にお会いし「申し入れ書」を渡しました。「検討してお答えする」
と いうことでしたが、それに対する返答は、10月5日の新聞各紙における報道で知りました。
10月4日 の定例記者会見で表明されたとのことで、私どもの会に対するご回答は直接はあり
ませんでした。新 聞報道によりますと、歴代の市長が「宛職」として就任されてきた奉賛会会長
を辞退されるという点については、私たちの申し入れが入れられ、一歩前進であると捉えてい
ます。しかし、根本的な問題 が残っており、重ねて「申し入れ」をさせていただきます。
 
 1.我われ市民サイドの会の「申し入れ」に対しては、直接に誠実なご回答を文書でお願い致
   します。
 2.福山市長が備後護国神社の奉賛会長に就任することは、憲法第20条、第89条に照らして
   抵触・違反しているから、市長が交替される節目であるし、それへの就任要請を拒否する
   よう前回「申し入れ」をしました。新聞報道によれば会長就任は辞退されたようです。しか
    し、「運営そのものに羽田 皓個人として参加することはやぶさかではない」 として「理
  事」 に就任されたようです。
   これは全くおかしな事で、羽田さん自身の憲法認識を疑わざるを得ません。福山市長とな
  られた羽田さんは、憲法第20条・第89条をご自身としてどのように理解されて、「理事」に
  就任されたのか、ご回答下さい。
 3.今年も9月初め、備後護国神社奉賛会の名において、市内の町内会長宛に「備後護国神
  社の初穂料」を町内会あるいは町内会員より集金し振り込むよう協力依頼がなされていま
  す。(前回の申し入れ時に、その資料はお渡しいたしました)このことに関して、福山市長と
  してどのように思われているか、ご回答下さい。
 
  以上、2と3に関して、きちんと誠意あるご回答を11月10日までにお願い申し上げます。前回
差し上げました関連する福井市や佐賀地裁判決などの報道記事を参考の上、市長室秘書広
報課を通じて、 ご回答くだされば結構です。
 
  (連絡先)721-0921 福山市大門町大門625
  池田静思  TEL (084)941-1474

    2004年10月26日
 市民生活部長様
  備後護国神社と町内会の関係を考える会
  〈 代表 〉 池田静思

申し入れ書
 
  私たちは三好章前福山市長に対し、備後護国神社の奉賛会長になっていること、そして同
神社の「初穂料」を福山市内の町内会長に集金依頼をしていることについて、これまで3回に
わたり「申し入れ」をして問題点を指摘してきました。また羽田皓新市長に対しても今年9月21
日に同様の申し入れをしてきました。羽田新市長は、私たちの申し入れを受け入れ「備後護国
神社の奉賛会長には就任しない」 という決断をされました。しかし、市民としてもっとも問題な
のは、奉賛会が市内町内会組織を利用 して初穂料の集金依頼をしていることです。町内会が
公的性格をもつことは、佐賀地裁判決で明らか になったものであり、その町内会が護国神社
奉賛会の初穂料を集めることは憲法の第20条・第89条に違反するものです。
  毎年町内会長宛に初穂料の集金依頼が送られているのは、市町連より奉賛会へ町内会長
名簿が渡っていると思われます。また、町内会会員或いは町内会会計備後護国神社へ振り込
むよう依頼するあり 方は、奉賛会が単位町内会長を勝手に奉賛会委員として利用していると
言わざるをえません。
 従いまして改めて以下いくつかの点について申し入れしたいと思います。
 
 1.福山市役所は町内会(自治会)へのこうした違法の依頼に関して、神社側(奉賛会)へ抗
  議をするのか?
 2.福山市役所は、各町内会長及び市町連幹部に対して、どんな指導をするのか?

 
  以上2点について、きちんと誠意ある回答を11月10日までにお願い申し上げます。
 
  (連絡先)721-0921 福山市大門町大門625
  池田静思  TEL (084)941-1474市長生活部長











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