03.11.15日 11月8日意見書の補充

意見具申書(補充書)

関保各位様
                              平成15年11月15日
             〒101-0062 東京都千代田区駿河台3-5-15荒井ビル4階
              岡田法律事務所 電話03.3233.1081 fax 03.3233.1083
                  全日本仏教会・信教の自由委員会委員
                   真言宗豊山派・泉福寺住職
                   弁 護 士 岡 田 弘 隆

前略 豊山派の岡田弘隆です.
今回、11月20日全仏の全国理事会に向けて、別紙の「11月8日付意見具申書(補充書)11月 
 15日付」を追加して提出しましたので、お届けいたします。
 また、各位の情報があUましたら、拙子にもお届け下さい。
 更には、この間題での連携の方策につき、ご指導ください。
 それでは、お互いに精進しましょう。
 ご自愛をお前り申し上げます。            合掌


意見具申書(補充書)
全日本仏教会 御中
                
                              平成15年11月15日
           〒101-0062 東京都千代田区駿河台3-5-15荒井ビル4階
            岡田法律事務所 電話03.3233.1081 fax 03.3233.1083
                  全日本仏教会・信教の自由委員会委員
                   真言宗豊山派・泉福寺住職
                   弁 護 士 岡 田 弘 隆


前略、拙子の11月8日付「意見具申書」の「補充書」として、提出するものです。
11月8日付「意見具申書」と一体のものとして、ご配布のほど、お願い申し上げます。

1、全仏の意思決定の原則は

  拙子は、11月8日付「意見具申書」において、以下のように指摘しました。

「全仏は、何よりも「加盟教団宗派の合意」を前提にして活動する団体であるはずです。全仏
は、基本的には「加盟教団宗派の全会一致」を前提にして活動する団体であるはずです。何よ
りも、重要な案件・争点のある案件については、この「全会一致」を前提にして行動すべきであ
りましょう。
 全仏は、また「加盟教団宗派の上部組織・司令塔」ではありません。
全仏は、また「全一仏教運動」という「崇高な理念・目的」は掲げられているものの、「加盟教団
宗派を解体して参加した組織」でもないのです。
 そうであれば、当然に前記のように、全仏は「加盟教団宗派の全会一致」が前提となるもの
です。」

 「全仏と言っても、実質的な中枢・常務理事会を担っているのは、理事長と常務理事2名を送
り出している教団宗派であり、その教団とは、現在理事長を出している曹洞宗と、浄土真宗本
願寺派、真宗大谷派、浄土宗の4つの教団だけです。その余の教団宗派等は7つでそれぞれ1
名の常務理事を送り出して合計で7名の常務理事ですが、4つの教団の常務理事数9名よりも
少ないのです。ですから、常務理事会の構成でほ、4つの教団の意向が大きく影響することと
なっています。その中でも、意見の強い者か他を圧倒することも有り得る機構なのです。ある
特定の問題の多少なりとも専門家として意見を出されれば、それを吟味するのでもなく、大賛
成となってします危うさを持った機構であると言わなければなりません。
 いずれにしても、何故かくも強行に教育基本法改悪推政策を進めようとするのでしょうか。そ
の理由を、全仏の現在の指導者は、公開の場所で答る責任があると思います。」

2、加盟教団宗派の内部で討議されたか
 
 仮に、今回のように、重要案件が常務理事会へ提案されたとして、その扱いはどうなるので
しょうか。     
 常務理事は、母体となる教団宗派(以下、母教団と呼びます)から指名されて派遣されている
のですから、先ずはその常務理事の母教団に持ち帰って、その母教団の内局ないし然るべき
機関にはかって討議をとげて、そのうえで母教団の意思をもって次の全仏の常務理事会で討
議をしたうえで結論を出すという過程を経るべきでありましょう。
 しかし、今回の教育基本法改正問題について、上記のような討議の経過をたどったのでしょ
うか。そのような跡は全くみられません。

3.教育基本法9条改正推進は、どこの教団宗派で決定したのか
 
 その証拠に、教育基本法改正推進ないし教育基本法9条改正推進について、仏教教団でそ
の推進を決定している教団があるのでしょうか。
 全仏の常務理事会及び理事会を構成している教団宗派には、この推進を決定したものは全
くありません。石上智康師の所属する浄土真宗本願寺派でも、同様です。
 要するに、全仏の常務理事会は、加盟の教団宗派から極端に突出して、教育基本法改正
(改悪)推進を決定して、その運動まで行なってきているのです。
 そんなことが、許されるのでしょうか。許されるはずはありません。

4、日本宗教連盟の加盟組織では、どうか
 
 それでは、全仏の加盟している「財団法人 日本宗教連盟〈日宗連)」はどうでしょうか。ご承
知のように日宗連を構成するのは、全仏の外には4つの団体で、教派神道連合会、日本キリ
スト教連合会、神社本庁及び新日本宗教団体連合会です。
 これらの4つの団体で、教育基本法改正推進について決めている団体はあるのでしょうか。
あります。
 それは「神社本庁」です。「神社本庁」の関係団体、神道政治連盟(神政連)が、昭和50年か
ら教育基本法改正運動を行なっており、神社本庁も昭和61年から同様の運動を熱心に行なっ
てきています。

5、神社本庁・神政連の運動の内容は?
 
 それでは、神社本庁・神政連などの運動の内容はどんなものなのでしょうか。
 それを明らかにすることで、今回の全仏の突出した方針の意味するところも明らかになると
思います。
  そこで、神政連のホームページの文章から、そのまま引用をしてみます。

「神政連は、昭和50年に「教育是正問題に対する運動の取り組みについて」を策定し、
その中で「今日の教育のゆがみの原因は、全てこの教育基本法の基底にある思想からきてい
ると考えられる。そこで、この基本法思想の転回と教育勅語の再興の要を一般神社関係者に
啓蒙するとともに、国会議員に対しても教育基本法改正の必要を訴える」として、教育基本法
の改正を長期的課題と位置づけ取り組んできました。
 神社本庁も昭和61年2月1日、臨時教育審議会の「教育改革に関する第一次答申」をうけて
「臨時教育審議会への提言」をまとめ、教育基本法の問題点を指摘しつつ、改正の要点として
「歴史と伝統の尊重」、「徳性の涵養」、「愛国心」、「教育勅語の精神の再確認」を明示するとと
もに、宗教的情操や宗教的倫理観の啓発培養のための方途として地域の慣習の継承や伝統
行事への参加を提言した経緯があります。」
 
 ここでは、神社本庁・神政連などの教育基本法改正運動の狙いが明確に「愛国心」、「教育
勅語の精神の再確認」、「宗教的情操や宗教的倫理観の啓発培養」だと述べられています。
 また更に、今回の中教審最終答申の評価については、以下のように述ペています。

 「中教審が提出した答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方
について」では、
 日本の伝統、文化の尊重・郷土や国を愛する心、社会の形成に主体的に参加する公共の精
神、道徳心、自律心の涵養を新たな教育の理念として盛り込むことが提言されています。ま
た、家庭の役割や責任についても新たな規定を求めており、神社界が長年にわたって指摘し
てきた諸点が盛り込まれた十分に評価で書る内容となっています。」

 このように、今年3月の中教審最終答申において、神社界の主張がほぼ全面的に盛り込ま
れたとして、絶賛評価しているのです。
 また特にここで強調しておきたいことは、「宗教的情操‥・の啓発培養」をあげていることで
す。
「宗教的情操‥・の啓発培義」の強調を、今日までどこの誰が言い出してきたかを、神政連の
ホームページは極めてよく表しているからです。
 
 以上、少し詳しく検討してみましたように、全仏の今回の教育基本法改正(改悪)推進政策
は、愛国心と教育勅語を礼讃する「神社本庁・神政連」の掲げる方針に、追従しよとするもので
あることは、明らかと言わなければならないでしょう。
 
6、全仏では、誰が提案者なのでしょうか?

 それでは、今回の全仏の教育基本法改正(改悪)推進政策の「提案者」は誰なのでしょうか。
それも明らかです。それは石上智康師なのです。
 同師は、浄土真宗本願寺派の宗会議長をつとめ、また全仏の常務理事をつとめ、また全仏
の理事長もつとめたことのある、俊才です。同師は、更に全仏選出の日宗連の理事であり、ま
た文部科学省の宗教法人審議会の委員でもあります。
 しかし、何故?同師は、今この時機に、愛国心と教育勅語を礼讃する「神社本庁・神政連」の
掲げる方針に、追従し癒着しようとするのでしょうか。
 また、神社本庁・神政連と言えば、長年「靖国神社国家護持」と「首相の靖国神社公式参拝」
を求めて運動してきたことでも知られています。
 それに対して、浄土真宗本願寺派(真宗十派としても)は、その正反対に靖国神社国家護
持」と「首相の靖国神社公式参拝」に繰り返し反対してきたことで知られています。
 その浄土真宗本願寺派の議長をつとめる石上智康師が、何故?なのでしょうか。
いつから同師は、愛国心と教育勅語を礼賛し「靖国国家護持」と「首相の靖国公式参拝」
を求める「神社本庁・神政連」に癒着する方向に、180度の路線転換をしたのでしょうか。
 その理由を、同師は明確に説明する義務があるでしょう。
 何故、同師に説明責任があるのでしょうか。それは同師が、浄土真宗本願寺派及び全仏そ
の他の公的立場に立っているからです。同師は、全くの個人として主張しているのではないか
らです。
 ですから、同師が説明費任を果たさないのであれば、早々に全仏等の総ての公的役職を辞
職すべきではないでしょうか?

7、石上智康師の「真俗二諦」論
 
 拙子は、石上智康師は何故180度の路線転換をしたのか、その理由を知りたいと思いまし
た。そこで、拙子の手元にある石上智康師の昭和63年の著書「仏教と社金的実践の研究」(世
界聖典刊行協会)を、改めて読ませて頂きました。読ませて頂いて、良く分かりました。同師
は、ご自分で批判していた「真俗二諦」論に、その後の四半世紀の間に、深く深く染まっていた
のでした。以下は、同書からの引用と研究です。

 『明治四年、本願寺の第二十世門主広如は、明如門主に遺訓を授けたという。世に「御遺訓
御書」あるいは「御遺訓の消息」として残されて文筆がある。それには、次のように記されてい
る。
  わが宗におひては王法を本とし仁義を先とし、神明をうやまひ人倫を守るペきよし、かねて
  さだめおかるる所なり。・・・中略‥・希はくは一流の道俗、上に申すところの相承の正意を
  決得し、真俗二諦の法義をあやまらず、現生には皇国の忠良となり、罔極の朝恩に酬ひ、
  来世には西方の往生をとげ、永劫の苦難をまぬかる、身となられ候
 
  なるほど、廃仏穀釈という仏教の存続にかかわる大試練に対処せねばならぬ時代的背景
があったとはいえ、このような消息に象敏される真俗二諦の自己分裂した信仰生活が奨励さ
れている限り、主体的な仏道一貫する現世での生活創造は期待すべくもない。しかし、皇国史
観からの重圧からすでに解放されている今日とはいえ、右のような姿勢は、なにも戦前までの
弊風として一蹴できる問題ではないだろう。日本仏教の体質は、真俗の並立・二分化ないしは
その時々で真俗を器用に使い分ける二重人格の、いわゆる真俗二締」的仏教理解と処世か
ら、基本的にはいまだ脱しきっていないのである。』(同書207頁以下)
 ここで、同師は、明治初年の本願寺の第二十世広如門主の「真俗二諦の法義」を、「消息に
象徴される真俗二諦の自己分裂した信仰生活が奨励されている限り、主体的な仏道一貫する
現世での生活創造は期待すべくもない。」と大いに批判したのですが、その批判者であった同
師の四半世紀後の姿を「真俗の並立・二分化ないしはその時々で真俗を器用に使い分ける二
重人格」として、自ら予測しておられたのではないのでしょうか。

 しかしまた、同師の論理には、今日の同師につながる道が用意されていたとも評し得る論述
がみられました。
 同師は同書の247頁以下で、「平和問題に対する仏教徒(念仏者の姿勢」の選択肢とし
て、「三つの立場」があるとし、「絶対平和主義」「分裂的平和姿勢」「真実と世俗との緊
張関係を生き、向上をめざす平和論」と三つの立場に分類しています。
 同書で同師は、第一の「絶対平和主義」の道を、「核抑止という力の論理と、それによる平和
の秩序維持は、仏教及び真宗の真理観、平和観とは矛盾し、基本的に相容れぬことにな
る。・・浄土真宗は、核抑止を容認しがたい‥・真宗者は、日米安保条約に反対すべし」という
立場であると説明し(238頁)、「反面、世俗的不成功や世俗の力に無視されるれるか、あるい
は圧倒される可能性が大きい」−として、同師が取らない立場としています。
 また、第二の「分裂的平和姿勢」の道を、「平和に関する直接約言言動は、教義上の原則論
や理想論に終始L、その枠を決して出ない。しかし汚いことは、すべて政治にまかせる。ただ
し、政治がもたらす恩恵だけは、実質享受するという対応。‥・「現代における真俗二諦」版と
いえよう。‥・現在、念仏者の大多数は、この範疇にあるといえる。」として、この道も同師は取
らないとしています。
 そのうえで、同師は「第三の立場では、純粋教義論とは違い、より安定・前進した秩序を確保
するため」五濁悪世なる現実の一部肯定、それとの妥協を含んだ平和への漸進的アプローチ
の容認が予測される。‥・如釆の真実とは対立する自衛力を含む「世俗的諸力の容認」という
矛盾が含まれるだろうからである。」と、述べ、同師の考え方の最後の結論として、「今日の歴
史状況下においては、第三の立場の容認は、当面、不可避なものとならざるを得まい。」と結
論付けていました。
 ここで、「自衛力を含む「世俗的諸力の容認」と言っているのは、「自衛隊と日米安保条約の
容認」のことを指していることは、同師の前後関係の文脈から明らかです。
 同書において、同師は同書出版の昭和63年の時点に立って、「第三の立場」を選択すること
を宣言して、そのうえで「五濁悪世なる現実の一部肯定」、「如来の真実とは対立する自衛力を
含む「世俗的諸力の容認」という矛盾が含まれるだろう」と、自らの寄って立つ立場を宣言して
いたのでした。
 今日の同師の輝かしい世俗的成功を思いますと、確かに「世俗的不成功や世俗の力に無視
される」ことを理由に、第一の道を拒否された同師の卓見には、頭が下がります!
 以上で、石上智康師の今日の言動の源流にさかのぼっての研究は、ひとまず置くことといた
します。
 しかし、以上の研究によって、同師が今日、愛国心と教育勅語を礼賛し、「靖国国家護持」と
「「首相の靖国公式参拝」を求める「神社本庁・神政連」に癒着するように180度の路線転換を
したのかの、同師の思考の一部を垣間見ることができたのではないでしょうか。分かりやすく
言えば、突然の路線転換ではなく、同師の内部では、必然の結果にほかならないと言うことな
のです。

8、全仏は、直ちに批推決定を撤回して、白紙に戻すべきです
 しかし、問題は石上智康師主導による「神社本庁・神政連」に癒着するような全日本仏教会
の路線転換を、私たちは安易に容認するわけにはいかないと言うことなのです。
 こうして、今日、特にイラクに自衛隊を派遣することが決定したこの時機に、全仏が「神社本
庁・神政連」と癒着して「教育基本法改正(改悪)」を、母教団から突出して進めることには、大
いなる疑問があると言わなければならないでしょう。
 何よりも大事なことは、全仏として、また全仏構成の母教団としても(浄土真宗本願寺派とし
ても)、最も基本に立ち返って議論をし直すということです。
 最も基本に立ち返えるということは、「教育基本法の改正の是非」から議論を、母教団からや
り直すということです。そのうえで全仏として意見集約をはかるということです。この議論に、拙
速がありてはならないでしょう。
 これほど、道理に基づいた提案はないでしょう。
今回の理事会で、この方向を速やかに選択されることを、切に願いまして、今会の拙子の補充
書といたします。



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