真宗遺族会 全日仏へ要望書

真宗遺族会 全日仏へ要望書

教育基本法「改正」に関わる全日本仏教会に対する要請文

  すでに全日本仏教会が教育基本法「改正」に向けて「宗教教育推進特別委員会」を設置
し、中央教育審議会に対して要望書を提出された(2003.2.4)ことを聞き及びました。「要
望書」によれば、現行の教育基本法第九条一項、二項の条文「改正」を要請するとあります
が、このことは国家体制に組み込まれ、国家体制を補完するきわめて重大な事態と私たちは
受け止めております。政府において、有事法制と教育基本法「改正」が表裏の関係において提
起されてきたことは周知のとおりであります。有事体制下においては「有事」を支え、それに協
力する国民精神が準備されていなければなりません。そのために現在、教育現場では「国を
愛する心」や「日本人としての自覚」を求める動きがすでに始まっています。子どもの精神を国
家が囲い込み、国策に奉仕する国民に仕立て上げていく体制が着々と作られております。心
の国家管理化に無防備に、ますます混迷を深くしている現状況の中にあって、決して国家に取
り込まれることのない精神を打ち立て、国家の国民の内面への介入を排する精神を一人ひと
りが確立しようとする営みこそが仏教徒としてのありようと考えます。

  中教審に提出された「要望書]に「宗教的情操教育の涵養の尊重を明記し、教育の現場で
実施することが緊急の事と」し、そして「『特定の宗教のための宗教教育』という条文は『特定の
宗教のための宗派教育』と改正し、この際教育現場において宗教教育全般を禁止するような
解釈を生む余地をなくすことが肝要と存じます。」と述べられていますが、これはまた、教育基
本法の制定の歴史的経緯に対してあまりにも認識不足といわざるをえません。教育基本法は
憲法の精神に則りながら、教育の目的を明らかにしたものであります。
 
  「宗教の地位は尊重しなければならない」と言いながらも、特定の宗教教育をきびしく禁じて
います。これは憲法二十条の政教分離、信教の自由という精神を引き継いだものといえます。
「日本会議」とか「新しい歴史教科書をつくる会」など教育基本法「改正」を目指す勢力が、中教
審答申に盛り込もうとして結局盛り込めなかったものが「宗教的情操の涵養と道徳教育の強
化」という項目であるといわれます。このような教育をめぐる思想・政治状況下において、全日
本仏教会が教育基本法「改正」を積極的に推し進めることは、結局国家の恣意に取り込まれ
ていくのではないかと危惧されます。ここに全日本仏教会として、教育基本法「改正」の動きを
すみやかに中止されますよう強く要請いたします。
                                 以 上



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